2022.07.19 最終更新
高卒ニートだと人生終わりって本当?数字で分析する高卒ニートの問題点と改善方法
・高卒ニートは最終学歴が高卒で通学、就職のための職業訓練を受けておらず、家事・手伝いもしない人たちの総称
・高卒ニートに立ちはだかる壁は年齢が高くなるほど、険しくなっていく
・取り返しの付かないことになる前に就職サービスを利用したり、実務経験を積み上げていき、早め早めに行動するようにしよう
1.高卒ニートとは?
ニート(NEET)は英語の「Not in Education Employment or Traning」の頭文字をとった略語。
ニートの語源に関してはこちらの記事でも詳しく解説を行っています。
厚生労働省はニートの定義を以下のように定めています。
高卒の年齢は全員18歳。(留年や高卒認定の場合を除く)
卒業の時点では誕生日の関係で17歳の場合もありますが、高校の在籍期間は3月31日と定められているので全員が該当します。
高卒ニートの定義をまとめると、18歳以上の高校を卒業した男女で、学校に通わず職業訓練も受けていない、働く意思がない人を指します。
したがって、高校卒業後に専業主婦・夫になった場合、何らかの理由で失業して求職中の場合はニートに含まれません。
・フリーターとニートの違い
よく混同するのが、フリーターニートの違いです。
フリーターは、正社員ではなく、パート・アルバイトなどで働いて収入がある点がニートと異なります。
働く意思も持っており、パート・アルバイトで勤務しながら、正社員の仕事を探している人も含まれます。
ニート | フリーター | |
就業の有無 | 働いていない | 正社員以外で働いている |
働く意思 | なし | あり |
ちなみに両者とも、学校に通っていない点と家事・手伝いをしていない点、対象年齢を15~34歳にしている点は共通しています。
2.高卒ニートの割合は?
厚生労働省が調査した、平成30年の高卒の就職者数は約18万人。
一方、何らかの理由で卒業後に就職していない「学卒未就業者数」 も5万3千人います。
高卒の就職者数に対して、約3割は就職できていません。
自営やフリーランスの道もあるので、全員がニートというわけではないでしょう。
しかし、高卒に最も違い15歳~19歳の年代で約7万人(20歳~24歳で14万人)のニートがいるというデータがあります。
約7万人中、高卒者以外が一定の割合で含まれていると仮定しても、上記「学卒未就業者数 5万3千人」のうち結構な割合がニートになっていると考えるのが妥当でしょう。
コロナ禍の影響で雇用状況が悪化していることを考えると、ニートの数はさらに増加していると想定できます。
3.高卒ニートになる原因
・就職したが社会で挫折してしまった
ニート状態にある若者は、
- 同僚との付き合い
- 分からない点を上司に質問する
- 仕事を覚えることや失敗を繰り返さないこと
など、コミュニケーション面や業務の習熟度で、就業中に不安を抱えるケースが多いことが分かっています。
参考元 : ニート状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究
社会に出ると、複雑な人間関係の構築や仕事で早急に成果を出すことを求められます。
就職はしたものの、想像以上に力を発揮できず、自分の能力に挫折してニートになるケースは多いといえるでしょう。
・進学できずに、夢や目標を失った
学力だけではなく、経済面やタイミング的な問題で、望んでも進学が叶わないケースは多々あります。
失敗してもすぐ次の目標に向かえればよいのですが、進学に向け真剣に取り組んできた分、気持ちの切り替えが上手くできない人もいます。
- 周りから取り残された焦燥感
- 今後の人生に対する不安
- 目標を失った空虚感
など、さまざまな感情で板挟みになるでしょう。
その結果、自分の将来を悲観して、前に進む意欲を失う人も少なくないでしょう。
・就職活動したが受からなかった
高卒で正社員就職できる人は、就職希望者の56%。おおよそ半数は、正社員になれていません。
参考元 : 平成30年若年者雇用実態調査結果の概況
高卒は正社員になること自体が厳しいので、高卒ニートが安定して長期的に働ける職場を見つけるのは決して簡単ではないでしょう。
ニート状態にある若者は、総じて面接に対する苦手意識が強い傾向があります。
中には、面接の申し込みの電話や面接会場まで行くのを困難に感じる人も一定数の割合でいます。
就職活動は選考過程においてコミュニケーションの連続。
さらに緊張感に打ち勝ち、仕事への想いを積極的にアピールする必要もあります。
他人とのコミュニケーションに対して強い抵抗感があれば、当然のごとく内定からは遠ざかります。
何社受けても不採用を繰り返せば、自分は社会から必要とされていないと、ネガティブな感情に支配されるでしょう。
参考元 : 厚生労働省 ニートの状態にある若年者の実態及び 支援策に関する調査研究111ページ目
・生活リズムが崩れた流れから
就職に失敗した場合、当分の間は家が活動の拠点になるので、少なからず生活リズムは乱れるでしょう。
中には昼夜逆転の生活を長期間送り、通常の生活リズムに対応できなくなる人もいます。
ほとんどの会社は日中活動しています。
通常の生活リズムに対応できなければ、日中の行動意欲の低下や体調不良が重なり、ベストな状態で選考に臨むことは難しいでしょう。
生活リズムが崩れた流れから、物事に対して無気力になり、長期的に高卒ニートになってしまうリスクは十分にあります。
4.高卒ニートに立ちはだかる壁
・年齢が上がると、ニートが長期化する
厚生労働省「年齢層とニート期間」の調査で、ニート期間が1年以下の割合は以下の通り。
年齢層 | ニート期間1年以下 |
19歳以下 | 88% |
20~24歳 | 71.1% |
25~29歳 | 42.5% |
30~34歳 | 33.8% |
35歳以上 | 44.4% |
20代であれば、大半が1年以内にニートを脱出できていますが、年齢が30歳に近づく頃かニート期間が長期化しやすいことが読み取れます。
ちなみにニート期間が2年越えなど、他のケースでも同様の傾向が見られました。
ニート期間が長期化するのは、社会と接点を持たない期間が長くなることで、主に以下のような問題が出てくるからでしょう。
- 履歴書に傷がつき選考に受からない
- コミュニケーション能力の低下で、面接が上手く行かない
- 自分に自信が持てなくなる
これらは、ニート期間が長引き、年齢が上がるほど深刻になります。
取り返しのつく若いうちに、ニート脱出に向けて行動しましょう。
引用元 : ニートの状態にある若年者の実態及び 支援策に関する調査研究 報告書13ページ目
・書類選考の段階で落ちるケースが増える
新卒採用ではポテンシャルを重視されるので、書類選考で落ちるケースはそこまで多くありません。
しかし、高卒ニートは既卒向けの求人か中途採用の求人を受けることになるので、新卒に比べると書類選考のハードルは上がります。
高卒ニートは年齢は不利な要素になりませんが、職歴とブランク期間はネック。
書類選考は面接よりも経歴を重視して判断されます。
経歴で不利な要素があると選考が不利になり、面接に進めないまま終了してしまうケースも多いでしょう。
高卒ニート以外でも、中途採用の書類選考を突破するのは、ある程度苦労します。
高卒ニートの就職活動において、書類選考は一つの関門といえるでしょう。
・新卒一括採用が主流の日本文化
新卒一括採用とは、毎年同時期に一定数の学生をまとめて採用する方式。
年間を通して採用活動を行うより、特定の期間で一気に行えば選考を短期間で終了できます。そのため、企業にとっては採用コストを抑えられるメリットがあります。
日本では新卒一括採用が主流になり、独自の採用方式として定着しています。
新卒の権利を失った高卒ニートは、不利な状況で就職活動を行わなければなりません。
5:高卒ニートからの脱出方法
・スキル取得後、専門技術職を目指してみる
専門スキルを持っている人は少ないので、一度手に職をつければ就職は比較的しやすいのが専門技術職の特徴です。
求人票を見ると、実務経験〇年以上というイメージで細かく募集条件が設定されています。
私も技術職の求人を受けた経験があるので分かるのですが、募集条件を満たしている人は少数で常に人手不足というイメージです。
企業が求めるスキルを身に付ければ、年齢的に若い高卒者は十分に採用の対象になるでしょう。
スキルの身に付け方は人それぞれ。
専門学校でじっくり学ぶのも、受講料が無料のポリテクセンターを利用して半年ぐらいの期間で少し急ぎ足で学ぶのもよいでしょう。
目指す方向性が明確で、より高い専門スキルを身に付けたければ、大学進学も一つの選択肢です。
高校卒業直後の年齢であれば、スキルも身に付けるために、数年間ぐらい学習に励んでも不利にはなりません。
・実務経験を積んで、正社員を目指す
新卒の権利を失っている高卒ニートは、既卒や中途採用の求人を受けることになります。
基本的なビジネスマナーに加え、ある程度は戦力になる人材が求められるので、社会人経験や実務経験が全くない状況は不利といえるでしょう。
ただし、実務経験を積むのは「派遣」以外をおすすめします。
派遣の契約期間は3カ月がほとんどで、更新されなけば短期間で職を失いかねません。
派遣よりも長期的な雇用が見込まれる、直接雇用のアルバイトやパート、契約社員からステップアップを目指した方がよいでしょう。
・転職支援サービスを利用する
ニートや既卒向けの転職支援サービスは増えています。
高卒ニートが就職する上で壁になる、書類選考や面接の受け答えのポイントを徹底的にサポートしてもらえるのでメリットは大きいでしょう。
さらに、入社後の定着サポートをおこなっている会社もあります。
高卒ニートに限らず、内定はゴールではなく、入社して職場環境に馴染めるかが重要です。
短期離職を繰り返さないためにも、入社後の人間関係や仕事に不安を感じている人は、利用をおすすめします。
まとめ
ニート期間が長いほど社会復帰に時間がかかります。
10代・20代のうちなら、高卒ニートでもポテンシャルを重視してもらいやすいので挽回はしやすいでしょう。
しかし30代・40代を迎えると、即戦力であることが求められる年代に足を踏み入れてしまいます。
取り返しのつかないことになる前に、早め早めに行動して高卒ニートから脱出しましょう。